「それは、『探し物』というより『探し人』だろう?」


 だけど、キリトの口からはこんな言葉しか出なかった。


 ボキャブラリーの問題ではない。


 深く聞いて、下手に感情移入をされないようにしたのだ。


 彼女はあくまでアトランテ軍。


 戦場で出会えば、お互いに殺しあう・・・敵国の兵士なのだ・・・・。


 いや、それ以上に百合に似ている彼女の事情なんて聞きたくなかったのかもしれない。


 ・・・・・・どうしてかは、分からないが・・・。


「それもそうね。」


 彼女はそういうと、またフフフと笑みをこぼした。


「見つかるといいな・・・その探し人。」


 換気口に呑まれている紫煙を眺めながら口にする。


 心から思ったわけではない。


 だけど、そうとしか言いようがなかった。


「ありがとう。一応、聞いてみるけど、あなた知らない?キラって名前の女性なんだけど・・・。」


「なっ!」


 声を出してからしまったと思った。


 何で、彼女がその名前を知っている。


 いや、知っていても不思議はないのか。


 実際に目の前の女性は『昔の同僚』と言った。


 ってことは・・・・・。


 生きていたのかよ・・・・・・・・。あのクーデータの首謀者だった一人が・・・。


 しかもアトランテ軍とか、敵国の軍に堂々と入隊していたとは・・・。


 本当に化け物だな・・・あの先輩たちは・・・・。