「それでも、俺は君が憎む虎神軍の一人だ。」


 タバコを取り出し、火をつける。


 一息。


 紫煙が換気扇に吸い込まれるように、天井に舞っていく。


「だからよ。余計に変な借りは作っておきたくないの。万が一あなたを戦場で見かけても容赦なく引き金を引けるようにね・・・。」


 まったく・・・。


「射撃は苦手じゃなかったのか?」


「言葉のアヤよ。」


 なるほど。


 上手な言い回しだ。


「まぁ、どちらにしても、その心配はないだろうけどな・・・。」


 紫煙を眺めながら不意に言葉が漏れる。


「どうして?」


「残念ながら、俺は前線部隊ではないのでね・・・。科学省の勤めなんだよ。主な任務はギアの新規開発。」


「なんだ・・・残念。」


 そういう彼女の顔は本当に悔しそうに見えたから、女というのは恐ろしい。


 万が一、本当に戦場であったら、舞鶴は容赦なく俺に拳銃を向けるのだろうか・・・。