その部屋はとても広かった。


 それこそ小さな畑ぐらいならば、ココにすっぽり入ってしまいそうなほどだった。


 しかし、そんな広い部屋で人がいられる空間はとても狭かった。


 それこそ、古来に存在した畳というもの一つ分の広さしか存在しなかった。


 人工知能管理室・・・。


 そう名づけられた部屋の中には、超巨大コンピュータが置かれており、部屋の9割以上を占めていた。


 その中に一人の青年が椅子に座る形でコンピュータの前で、佇んでいた。


 キリトと名乗っている青年は18歳という年齢とは思えないほどに、幼い顔をしており、大きな瞳と、高い鼻、そして、目にかかるほどに伸ばした黒髪が特徴の中性的な男性だった。


「おはよう、百合」


 透き通るような高い声。


 彼が持っている、数多くのコンプレックスの一つなのだが、今さら変えようがない・・・。


『おはよう、キリト。今日も来たのね?』


 それに対して返事するのは、人ではない。


 人工知能・・・YURI・・・・・・。


 それが、彼女の名前・・・。


 人類の知恵と叡智の結晶体である・・・。


 しかし、このような姿をしているコンピュータを見て誰が思うであろうか・・・。