「また、恋人のところかね?」


 数十歩と進んでないところで、横から声をかけられた。


 顔を向けるとそこにいたのは、顔中にしわがよった、白髪白衣の老人。


 ドクターと呼ばれている小柄な老人。


 ・・・・本名は知らない。


 知る気もない・・・・。


「別に恋人なんかじゃありませんよ。」


 紫煙と共に吐き出す。


 少なくとも、百合と俺は付き合っていたわけではない・・・。


 ・・・・・・・そして、もちろんこれからも・・・・・。


「その割りに足蹴に通うの・・・。」


 口にしながらフォフォフォと老人は笑う。


 最初はこの嫌らしさに嫌悪感も覚えたものだが、慣れてしまえばどうということない。


「それが、俺の任務ですから・・・。」


 それ以外にアイツの元に行く理由がどこにあるというのだろうか・・・。


「若いの・・・。」


「ドクターに比べたら、誰だってそうでしょう?」


「そう意味で言ったわけではないがの・・・。」


 口にしながら老人も自分と同じようにポケットからタバコを取り出し、火をつける。


 一息。