∫hiRo 〜雨の向こうで僕が思うこと〜

 

 今度は僕がショコラに聞いた。

「ショコラこそ、どうしてたんだよ? 雨で例の場所にも行けなかったんだろう?」

すると、ショコラの上がった調子が、再び落ちたように見えた。

「あぁ、あれな。もうよくなった」

「もうよくなった? もしかして、前のご主人に会えたのかい?」

ショコラは視線を僕からよそに逸らした。

「会えた……かな?」



僕は、朝からショコラの様子がおかしかったことを思い出した。

「会えた割には、全然嬉しそうじゃないじゃないか。何かあったのかい?」

真顔で尋ねる僕に、ショコラは小さく、

「3日前にさ、今のご主人が突然、俺を昔の家に連れて行ってくれてさ。そこに前のご主人はいたよ」

とつぶやいた。


「えぇっ?前のご主人、家に帰ったんだね!
じゃあショコラも元の家に帰るのかい?」


ショコラは目を閉じた。


そして


「帰れないよ。前のご主人、死んでいたんだから」


ショコラは静かに、そうつぶやいた。