桜の花は満開になったその日を境に、咲くまでの時間とは比べものにならないくらい速いスピードで、あっという間に花びらを散らせていった。
「散らなければいいのに」
僕は黄緑色の葉が見えてきた桜の木を見ながら、そうつぶやいた。
こんなに綺麗な桜の花がどうして散ってしまうのか、全く理解できなかった。
すると、突然空の色が陰り、ついには雨が降って来た。
僕は慌ててベンチの下に潜り込んだ。
雨は次第に強くなる。
ベンチの下はとても狭く、強い雨粒は跳ね、僕の体を濡らした。
「雨は嫌いじゃないけど、風が吹くとちょっと寒いな。やっぱり他に眠る場所を探さないといけないなぁ」
僕はこの雨が止んだら、少し行動範囲を広げてみようと思った。


