太陽が容赦なくじりじりと肌を焼く。こんな暑い日に誰が外にいるのだろう。……いや、いた。


大きな木の幹に寄りかかり昼寝をしている青年。汗一つかかずに平然と瞳を閉じている。僅かな風で揺れるその髪は影よりも黒く、その男が出している雰囲気に飲みこまれているようだ。


うっすらとその瞳を開け、ぼぅと空を見る。太陽が視界に入り、僅かに開いていた瞳も再び閉じられる。


ピクリと右眉を上げ不機嫌な顔をした。


「………なんだか面倒くせー奴が来たな」


ぼそっと呟くと、彼は閉じられていた瞳をゆっくりと開けた。


広い広いこの草原に人影が一つ。一直線にこちらへ向かってきている。


「~っ、ルチェル様ー!」


若い少年が危なっかしく走ってくる。その影がようやく彼の前に到着した。首筋まで汗を流し、それでも真っすぐと少年は彼を見ていた。


「たっ大変です、ルチェル様!!」


太陽を反射させる白銀の鎧を身につけた少年は慌ただしく両手を上下に振った。この少年が身につけている鎧こそがこの国では下級兵士を証明するものだと言ってもいいだろう。


「…お前、とりあえず動くな」


ルチェルと呼ばれた男は未だ木の幹に寄りかかり少年を眩しそうに見上げていた。


「ん…、あー!!申し訳ありません。実はですねこの鎧、昨日僕が綺麗に拭いたばかりなんですよ。ふきふきとそりゃまあ~、丹精込めて______」


ルチェルはうんざりして、少年の言葉を遮った。


「で、用はなんだよ」


座ったままルチェルは少年を見上げる。その表情からは全くと言っていいほど少年の話しに興味など無い。というかもともと他人の話しに興味などは無いのだが。


「…もう少し真剣に僕の話を聞いて下さいーっ!!こんなに汗だくになって貴方様をさがしたというのにっ」


肩で荒い呼吸を繰り返し、叫んだ。その動作で栗色の髪から汗が滴る。


俺が悪いのか、それ?と声にしそうだったがまあこんな男でも一応年上な訳で…


「あーわかったわかった。悪かったな、だがどうせその用とは陛下のお呼び出しってやつだろ?」


服についた埃をはらって立ち上がると大きな欠伸をした。