甘い声で囁いて




「あの、すみません。何かご用事があったんですよね」


小さく頷いてから深々と頭を下げる。



「あ、ううん、大丈夫です。多分待ってくれると思うし」


だから頭を上げて?


そう言う女の人の言葉に甘えて顔を上げる。



少し茶色がかった長い髪はふんわりやわらかそうで。


微笑むその姿はものすごくほっとする。


「もう大丈夫?」


聞かれて咄嗟に


「あ、ハイ。大丈夫です」


応える。


すると

「嘘だよね?」


まるで魔法使いのようにあたしの嘘を見破る。


「もしかして彼氏と喧嘩した?」