出会いの高速道路

「今じゃ仕事で各地転々として、なかなか遊べないんだけどな」

肩を竦める同僚を見て、近場ではコイツの悪評を聞かなくなったことを思い出す。

「でもお前、定時で毎日帰っているじゃないか」

「残業は趣味じゃないんだ、お前と違って。でもキレイな女の子が見られるなら、残業も悪くないかもな」

「…言ってろ」

コイツの発情は病気みたいなもんだし、そのうち再発するだろう。

何て言っても春だし。

「とりあえず、仕事頑張ろうぜ。クビになったら、女も寄ってこない」

「そうだな。それじゃそろそろ行くか」

欠伸をかみ殺しながら、立ち上がった。

「おいおい。しっかりしろよ?」

「ああ、何とか平気だ」

「じゃ、お互い頑張ろうぜ!」

「だな」

―そしてその時見た同僚の笑顔が、最期に見たヤツの笑顔だった。

あの夜から数日、早めに帰れることが多くなり、彼女を見かけることはなかった。

もう歩くのは止めたのかと思った。

そのことを少し心寂しく思いながらも、ほっとしている自分に気付く。

やっぱり夜、高速道路を女の子が1人で歩くなんて危険すぎる。

それに…何だろう?

彼女の行動には、何か深い闇の匂いがする。

それこそ、関わってしまった者を呑み込んでしまうような深い闇。

俺は人と関わるのがあまり好きではないが、人を見る目はあった。

どんなに偽りの仮面をかぶっていても、漏れ出す感情を読み取るのが上手いみたいだ。

だから同僚とは付き合いやすかった。

アイツは表も裏もないも同然だったから…。



…なのに何故、アイツは車の事故で死んだんだ?

しかもいつも使っている高速道路で。

そして何故…彼女がその場にいるんだ?