そんなことを考えていたある日の夜、通った高速道路は空いていた。

そしてライトがまた彼女の姿を浮かび上げた時、俺は思わず車を止めた。

「ねっねえ、キミっ!」

「はい?」

可憐な声で、彼女は振り返った。

今日の服装も、真っ赤だ。

もしかして精神病なのかもしれない…。

「高速道路を1人で歩いていたら危険だよ。送るから車に乗って」

「えっと…」

彼女の困惑した表情を見て、ハッとした。

これではナンパだ。

俺は名刺を一枚取り出し、彼女に差し出した。

「俺の身分証明。警察に持っていきたかったら、持ってっていいから。でもここは本当に危険だ。車に乗ってくれないか?」

名刺には俺の顔写真や社名、それに仕事用のケータイナンバーも載っている。

彼女は戸惑いながらも名刺を受け取り、弱々しく微笑んだ。

「それじゃあ…サービスエリアで降ろしてもらって良いですか? 家族に連絡しますので」

「分かった。じゃあ助手席に」

「はい」

にっこり笑った彼女の笑顔はとてもキレイだった。

隣に乗せて気付いたことだが、彼女の肌はとても白い。

長く黒い髪に、大きな琥珀色の瞳。

まるでお人形みたいだ。

「今まで何度もキミを見かけたんだけどね。どうして夜の高速道路を1人で歩いているんだ?」

「わたし、探している人がいるんです。その人はこの高速道路をよく使う人なので、歩いていれば見つかるんじゃないかなって」

「探している人って、誰?」

「う~ん…。重要な人です、わたしにとっては」

重要? 『大切』、ではなく?

「…こんな聞き方をして、悪いとは思う。キミはその…精神的にうんぬんってコなのかな?」