出会いの高速道路

「キミと食事をした日、お父さんに叱られていただろう? 俺に向かって、何を言ったんだ?」

「ああ…あの時ですか?」

彼女はくるっと振り返り、数歩歩いた。

そしてまた振り返り、俺を見て微笑む。

…あの時のように。

「あなたは『違う』。だから生かしてあげます」

その言葉を発した唇の動きが、あの夜の彼女の唇の動きと重なった。

ぞくっ!と背筋が震えた。

「なるほど…。お父さんが怒るわけだ」

「はい。車の中でも説教されました。でも悪いことじゃなかったんですけどね」

「確かに。俺は何もしていないから、生かされているワケだし」

「ええ、無関係の人は巻き込む気はありませんでしたから」

辺りに救急車の音が響いてきた。

「それじゃあわたしはこの高速道路を降りますね。もう二度と歩くことはないでしょう。さようなら!」

彼女は眩しい笑顔で、その場を立ち去った。

俺には引き止めることはできなかった。

燃え盛る車から見えるアイツの犯罪を、止めることができなかったのだから…。