わたしの住む地域では時々、春でも雪が降る。

それはほんの短い間のことだけど、嬉しく思える瞬間でもあった。

でも近年ではあまり降らず、さみしく思っていた。

高校生活も終わりに近付いてきて、わたしは別れの季節を迎えようとしていた。

…だからだろうか?

いつもは引っ込み思案のわたしは、決心した。

もし今年の春、雪が降ったら―彼に告白しよう、と。

彼とは高校一年の頃から、同じ図書委員だった。

好きな本の種類が似ていて、よく話をした。

時々だけど、2人だけで出かけたりもしていた。

お互い口には出さなかったけれど、多分…両想いなんだと思う。

彼もわたしも引っ込み思案なところがあるから、はっきりとしたことは言えないケド…。

でも、多分、そう!…だと思う。

…ううっ。自信が無い。

3年間も側にいて、恋人未満友達以上の関係は結構辛い。

でもハッキリしたかったけれど、万が一、ピリオドを打たれたらキツイ…。

そんな思いでズルズルと3年間過ごしてしまった。

けれどこの春、お互い別の進路に進んでしまう。

わたしは専門学校に。

彼は大学に。

そうなれば彼との交流も自然消滅しそうで、イヤだ。

だから決心した。

もし今年の春、雪が一瞬でも降ったら、彼に告白しようと。

降らなかったら…きっと縁はなかったんだと、諦めることも決意した。

運を天に任せる、と言うのもアレかもしれないけど、こうでもしなければ勇気が出ない。

高校の卒業式では、雪は降らなかった。

あとはお互いの入学式までが、勝負だ。

入学式の後に降っても、告白はしない。

それだけは心に決めていた。