「マサキがさ、引っ越す時の…」


「あ、マサキが?すでに二年前に帰ってきてるもんね。」


そう。本当にマサキは帰ってきていた。
しかも、同じ学校。


本人いわく、“二人共朝弱いから、家から一番近い高校に通う筈”と判断して、同じ学校に行く為に考えたらしい。


本人に聞けば済む話なのに、驚かせたかったんだと。変な奴だ。


「まさか、本当に帰ってくるとは思わなかったー。凄く嬉しかったけど」


俺も、正直、嬉しい。結衣も嬉しいなら、なお嬉しい。
…そんな事は、結衣の前では口に出せないけれど。


「今では、生徒会長だもんね。凄いなー。」


「つくづく、嫌味な奴」


俺がそう言うと、結衣は笑った。
そういえば、10年前の結衣は泣き虫だったけど、いつからだっけな…泣かなくなったの。


いつも見ているのに、その辺は忘れてしまった。





「はよ、結衣、勇!」


教室に入ると、結衣の親友、大川圭子が一番に挨拶してきた。
150cm、あるのか無いのか…な、その身長と、黒目がちの大きな瞳。


ふわふわのくせっ毛。
一般的に言って、可愛い顔をしていると思う。


一方、結衣は…圭子とは反対。
身長は170程あって、目はそこまで大きくは無いけれど、綺麗な瞳をしている。


シュッとした、整った顔立ちに、サラサラの黒髪のロング。
身長は高いけれど、背筋が綺麗で、どこに居ても目立ってしまう。


おっとりした性格が良いと、友人が話していた事もあった。


「勇?まーた結衣見てぇ」


胸の下あたりを、人差し指でつつくふりをする圭子。


「だ…っ、や、…違う!」


噛みまくりなのが怪しい、と自分で思った。
幸い、結衣は鞄を置きに、少し遠い位置に居た。