ピピピピピ…


「う……」


目蓋を開くと、そこはただの真っ白な天井だった。
重たい体を、ムクリと起こすと、ボーっとしながら右手で左側の首元をかく。


「なつかし…夢。」


まだ回転しない頭を動かして、独り言を言う。
多分、10年前の事だった筈だ。


まだボーっとしていると、体が震えた。
季節はもう冬なのに、毛布はベッドの下に落ちていた。


自分の寝相の悪さに少しイラッとしながら、毛布をベッドに上げて、自分はベッドから離れた。


学校の制服に手を伸ばした。
用意が終わると、親に『行ってきます』と言って家を出た。


通ってる高校まで、徒歩10分。
朝は結構寝ていられるから楽だと思う。


寒いけど、手袋をつけるのが嫌いなので、ズボンのポケットに手を入れる。


「おはよう、勇」


肩をポン、と叩かれて振り向くと、そこには結衣がいた。


「どうしたの?人の顔をジロジロ見て」


“気持ち悪い”と言わんばかりに、少し後ずさりする結衣。


「や、セクハラじゃねーぞ。なんか…懐かしい夢見たから」


「懐かしい夢って?」


「10年程前。」


「わ、懐かしい!」


10年前の出来事を思い出したかのように、両手を叩いて“パン”と音を出した。結衣はニコニコと、こちらに顔を向けた。


「で、どんな内容だったの?」


「お前が泣いてる夢。」


「うそおー!やだ!」


「やだじゃねーよ!10年前のお前って、泣いてるとこしか見た事ねーぞ」


「そ、そんなに泣いてない!」


結衣は顔を真っ赤にさせて、頬を膨らませた。
俺はズレたマフラーを直し、笑った。