【完】とわの風、青空の君。

キキーッ!


私は突然鳴り響いた自転車のブレーキ音に、慌ててあげていた顔を元に戻した。


「風子!」


そこにいたのは、自転車にまたがった、砂まみれのキュウちゃんだった。


「おかえり」


「風子・・・俺のこと待ってたの?」


「うん・・・なんとなく戻ってくるような気がして」


「そっか」


キュウちゃんは自転車のスタンドを立てて停めると、「こっち」と言って、私をグラウンド脇にあるベンチへと座らせた。


「今日の試合・・・行けなくてごめんね」


「別に謝ることなんかないって。やっぱなあ、試合の直前だけ必死になってバット振ったって、当たるわけないんだよな」


キュウちゃんは、ハハっと苦笑いを浮かべた。


「私が行ったら、ホームラン打てたのかな?」


「まあ、それはあるかもな。お前は俺の勝利の女神だからな」


キュウちゃんが隣に座る私の顔を覗き込みながら優しく微笑んだ。

そして、ハアっとため息をつくと、空を見上げた。


「あのさ、風子。風子に言ってなかったことがあるんだ」