マスターと観光地のオススメや、穴スポットを聞いたり等と雑談しながら食べていると、ふとマスターが
「学生さん達、どこに泊まるのかぇ?」
と聞いてきので、
久住が素早く「確かオーシャン高塚リゾートホテルです」と答えた。

するとマスターが
「あぁ…あんた達あそこに泊まるのかい?ん〜…まぁ…本館の方なら大丈夫か…」と言ったので、美知子が「本館なら?どういう意味ですかぁ?」と聞いた。

「なぁに、大した事じゃないんだよ、確かあそこは綺麗で豪華な所だからねぇ、楽しめるはずさぁ」
と笑いながら言うのだが、目が笑っていない。

何かさっきから違和感で落ち着かないでいる私をよそに他3名はホテルが楽しみだときゃいきゃい騒いでいた。
特に武井のテンションが上がりっぱなしだった。

そうこうしてるうちにもう時間迫っていたので、マスターにお礼と代金を払う。

帰り際に、マスターから
「あんたぁ、何か見えるタチだねぇ、これ持っとき、役に立つかもしれんしね」と手渡された物はお守りのようだったが、『交通安全』とか『安産祈願』など書かれた類の物ではなく、無地の濃い真っ赤なお守りで年季の入ったものだと一目でわかるものだ。

私は大事そうな物に見えたので、頂くわけにはいかないと断ったのだが、その時になったら返してもらうさねと意味深な言葉を残して、店の中の奥に引っ込んでしまった。



頑張って走ったのだが、集合時間に遅刻してしまい、鳥居先生にどこで道草くってきたんでしょう〜かと笑いながら早く早くとバスの中へ促してきた。

せっかく休憩して涼んできたのに、走ったせいで逆に汗だくになり、バスのクーラーにへばり付く羽目になったのだった。


ふと手渡されたお守りに目をやると、あんなに濃い赤だったのが、朱色になっていた。
喫茶店での照明が濃い赤に見せていたのだろうか。

ちょっと首を傾げていると、美知子がそれどうしたの?と聞くので、思っていた事を含め全部説明することにしたのだ。

それを聞いた美知子は、そういえば…と私に教えてくれた。