私達は一日目に回る所をほぼ、回り終えた頃には、暑さもあって疲労困憊していた。
まだバス集合時間まで時間が余っていたので、集合場所に行く途中のどこか喫茶店にでも寄っていこうという話しになった。

観光地を抜け、探しながら歩いていると、どこか昭和の香りがする古びた喫茶店がビジネスビルの間の奥に、我ながらよく見つけたと褒めてあげたいぐらい目立たず、ひっそりと建っていた。
看板らしき看板はなく、ドアの硝子に小さく『くまや喫茶』と書いてあるだけ。

他にめぼしいお店もないのでそのお店に入ると、誰もいる気配がない。
「すみませーん、誰かいます?」
と美知子の高い声が響いた。

ややしばらく待っても返事がないので、もしかしてもう閉店なのだろうか等と話していると、いつの間にかカウンターに老人の婦人が腰掛けるように立っていて、
「いらっしゃい。歳なので、すぐに動けなくてねぇ」
と急に言われたので、私達は度肝を抜かれた。

全く人が動く気配が感じなかったので呆気にとられてしばらく立ってていた私達に、
「今ならかき氷もあるけど、どうかい?そこに座ったらいいよ、どうぞ。」
とカウンターの方を勧めてくれたので、そうすることにして、かき氷を注文した。


「あんた達、ここらへんの子じゃないねぇ?」
と話かけてきたので、修学旅行で来ていて、クタクタになっていたら休む所を探していたらここを見つけたという事を説明をした。

すると、老人のマスター…―マスターというより駄菓子屋のお婆さんみたいだ。
が小さな声で
「よく、ここを見つけられたもんねぇ、普通は見つけられんはずなのにねぇ」とボソッっと呟いていたのだが、聞き取ったのは私だけだった。どこか意味ありげな発言が少し気になったものの、この時の私はあまり深く考えなかった。


「は〜生き返るぅ〜、かき氷はこれだよぉ〜」と言ったのは金時かき氷を頼んでいた美知子だ。
白玉もついていてとても美味しそう。
私は王道のいちご味。
食べ物の好みは見た目とあまり比例しない。

武井はメロンのかき氷になぜかメロンソーダーのメロンダブルで注文していて、後でお腹でも壊しそうな組み合わせだ。

久住はアイスコーヒー。優雅にミルクを混ぜる姿はなかなか様になっている。
ここは見た目通りか。