善さんが手入れをしている花がキレイに飾られていて、春の匂いを感じた。

ガラス張りの壁から差し込み日差しが、日和の茶色い髪を艶めかせる。




近いって…
どんだけだよ…―


両手をポケットに入れて、運動がてら小走りに足踏みする日和。




マンションの前に車が一台止まった。

助手席から女が下りる。

女は真っ直ぐ日和の方へ走ってきた。


弥生だ。



「あっ」

息を飲む日和。


「遅くなってスミマセン」


「…いえ、…こちらこそ急にお呼び立てして…」



いつの間にか敬語に戻る不自然な2人。


日和は取り敢えずエレベーターまで案内した。



乗り込む2人。

やはり不自然。



彫刻のように固まっている…。



「すっ…すごいマンションですね」

先に口を開いたのは弥生の方だった。


「えっ?…そーかな」


「エレベーターも、ゴージャスだし…」


「うん…」



片言の会話が途切れると、再び沈黙が続いた。









「「あの…」」


声が重なる。
よくあるパターン。


「そっちから…」

日和は発言権を弥生に譲った。



「あの…さっきは軽はずみで変なこと言って…ホント…ごめんなさい…」