オイ…―


「何、勝手なこと言ってんだよ!」

律壱に突っ掛かる日和。


「謝っちゃえよ」

いつになく爽やかな微笑みで律壱は言った。



「いっ…いつ来るの?」


「もうすぐ。家近いらしいよ」


「はっ?」


「だから、早く迎えに行きんしゃい」



マジかよ…―



律壱は無理やり日和の背中を押した。



「…クソ律壱」

日和は渋々、部屋を出て行った。




「誰に電話してたの?」

愛里子が律壱に尋ねる。


「お仕事相手の人だよ」


「女の人…なんだね」

愛里子は不安そうな顔をする。



「愛里子ちゃん、日和が好きなの?」



コクリとうなづく愛里子。

「そっか…」



「りいちくんも日和が好きでしょ?」


「えっ…」


「隠しても愛里子には解るよ。お友達として以上に好きだってこと」

愛里子は真っ直ぐ律壱を見つめる。


「…さすが、妖精さんだな」

律壱は苦笑いをしながら答えた。


「日和は何も気付いてないね」


「気付かれても困るだけだよ。報われない恋なんだから…」


律壱と愛里子は互いに悲しげな表情を作っていた。





その頃日和はマンションのエントランスに居た。