日和は濃いサングラスの奥から、順に点灯していく階の数字だけをじっと見つめていた。
B1は駐輪場になっている。
日和はエレベーターを降りると、真っ直ぐ目的のママチャリに向かう。
"ひよりん"と落書きされたそのママチャリにまたがり、日和はコンクリートの床を蹴った。
「とぁ〜!」
よく分からない奇声を発してペダルをこぎまくる日和。
コンクリートの床は徐々に下り坂になっていく。
それに合わせてママチャリも加速していった。
そして大きなカーブに差し掛かると、日和は両足をペダルから外した。
「ひゃっほ〜!」
ご機嫌な日和の声。
ママチャリがカーブを抜けると屋根がなくなり、青い空に太陽が眩しく輝いて彼を照らす。
マンションの隣は海になっていた。
潮の香がとても優しい。
穏やかな昼下がり、日和はその優しい香を吸い込む。
自転車の通用口で、彼はしばし立ち止まった。
「おっ、ひよりん!これからお出かけか?」
日和に声を掛けたのは70過ぎの老人だった。
「おはよ、善さん。何回も言うけど、オレの名前は"ひよりん"じゃないから」
「わ〜かってるよ。ただのジジイの冗談だろーが?」
B1は駐輪場になっている。
日和はエレベーターを降りると、真っ直ぐ目的のママチャリに向かう。
"ひよりん"と落書きされたそのママチャリにまたがり、日和はコンクリートの床を蹴った。
「とぁ〜!」
よく分からない奇声を発してペダルをこぎまくる日和。
コンクリートの床は徐々に下り坂になっていく。
それに合わせてママチャリも加速していった。
そして大きなカーブに差し掛かると、日和は両足をペダルから外した。
「ひゃっほ〜!」
ご機嫌な日和の声。
ママチャリがカーブを抜けると屋根がなくなり、青い空に太陽が眩しく輝いて彼を照らす。
マンションの隣は海になっていた。
潮の香がとても優しい。
穏やかな昼下がり、日和はその優しい香を吸い込む。
自転車の通用口で、彼はしばし立ち止まった。
「おっ、ひよりん!これからお出かけか?」
日和に声を掛けたのは70過ぎの老人だった。
「おはよ、善さん。何回も言うけど、オレの名前は"ひよりん"じゃないから」
「わ〜かってるよ。ただのジジイの冗談だろーが?」

