「弥生さん、オレ…覚えてたよ」



「……?」



「弥生さんの名前」

正確には…

思い出したんだけど…ー






「…嘘付き」

鼻で笑う弥生。



「嘘じゃねーよ」

「嘘っぽいよ」


「なんでだよ」


「言い方、カッコつけてたし」



「はぁ?…」


「台詞みたいだった」


「どこが?…」


「しかも棒読み」



「…悪かったな!嘘っぽくて、棒読みで……」

すねる日和。



「…子供みたい」

笑う弥生。




日和はくるんと回れ右をして歩きだした。


「どこ行くの?」


「もう、お前なんか知らねぇ〜」

すねたままの喋り方。




「ちょっと、置いて行かないでよ」


「別に、あんたに会う為に来たんじゃねーから勝手だろ」


















「日和!」






日和の足が止まる。



「私…日和のこと…」



ゆっくり振り返る日和。



そこには今まで見たことのない位、可愛くて美しい弥生の姿があった。



「…なんで途中でやめんだよ。最後まで言えよ」



意地悪な顔で再び弥生の元へ戻る日和。