『春限定みたいな名前だな』
日和の呟きに頬を膨らます少女。
『あなたの名前は?』
『……日和』
『日和?』
『なんて、冗談だよ』
『つまらない冗談!』
『俺の名前は植杉日和!』
笑いながら海に向かって叫ぶ日和。
『もう、失礼な人』
少女の頬は膨らんだままだった。
テレビであなたが本当に植杉日和だったと知った…ー
ごめんね…
信じてあげなくてー
それから何度もあの公園に通った…ー
だけど…
一度も会えないまま時だけが流れた…ー
「弥生さん、これ、早く日和に知らせよう」
弥生の手を引く律壱。
「でも…」
「例の公園にまだ居るかもしれない」
焦る律壱。
対する弥生は浮かない表情をしていた。
「律壱くん…」
「何?」
「…私…何かを忘れてる気がする…」
「忘れてる?」
原稿を読み返す弥生。
「すごく大切な何かだった気がする」
律壱は無言のまま、目の前で困惑する弥生を見ていた。

