「主人公の名前なの」
「えっ?」
「よく原稿を見て。不自然でしょ」
律壱は原稿を一枚一枚真剣に眺める。
「…これって…」
「いないの」
「弥生さん…」
「ここに描いてあった愛里子というキャラクターだけがきれいに消えてるの」
ペンの後も残さず、漫画の主人公は全ての原稿から姿を消していた。
「この…愛里子って…」
たどたどしく尋ねる律壱。
「妖精の愛里子」
「……」
「私たちが探してる少女だよ……」
「マジかよ……」
「私も信じられないよ」
初投降した作品のキャラクター…
彼女の存在すら忘れていた…ー
なのに…
何で今頃、こんな形で…ー
「日和…」
律壱は小さく呟いた。
私の名前を覚えていてー
私の名前を忘れないでー
『芸能人に恋して何が悪いの?』
『私は日和を顔で好きになった訳じゃない!』
『アイドル扱いしないで…』
『笑いたきゃ、笑えば』
『軽蔑されたって構わないの』
『昔の日和の詩が好き…』
『彼が…可哀想…』

