「そんな偉いことした訳じゃないのに…」
そしてまたボーっと事務所の窓から空を見上げる弥生だった。
「悩み事ですか?」
「悩みなら沢山あるもん…」
弥生は興味なさげに答える。
「恋の悩みは?」
「そっ…そんなもの、あるわけないじゃない!」
弥生のまれにみる大声に他のアシスタントたちが振り向く。
背中を流れる冷たい汗。
「もう、変なこと聞かないでよ」
囁く弥生。
「…ごめんなさい」
こちらも小声。
しかし顔はニヤニヤしている。
「何、その顔は?」
「先生、恋してるんですね」
「…っだから、してないってば」
みるみる真っ赤になる弥生の耳。
「でも、最近の先生ふわふわしてますよ」
「…ふわ…ふわ?」
「仕事場抜け出したと思ったら、楽しそうに帰ってきたり」
「それは…友達と…」
「しかも何げに少しメイクしてて可愛くなったし」
「それも…友達の…」
「目が潤んでます。絶対に恋ですよ」
………―
言い返す言葉も見つからず、また空を見上げる。
有り得ない…―

