「まあ。あんまり心配することないよ」


あーちゃんは、あたしの肩をポンポンとを叩く。


きっとあーちゃんは、あたしが遠くを見ているのを、落ち込んでると勘違いしてるんだろう。


でも……違う。


あれは確かに、楓

と、愛チャン……。


ふたりは楽しそうに廊下でお喋りしてる。


遠くから見ても分かるんだ。


楓はあたしにも滅多に見せないような笑顔で愛チャンと話していたから。


「な、何で王子があの子と喋ってるの!?」

「もしかして付き合ってるのかな?」

「でも悔しいけど、王子とあの子はお似合いだよ……」


ふたりのやり取りを見ている全員が、そんな言葉を口にしていた。


「も、もしかしてあの子が桜田愛?」


ぼんやりしているあたしに尋ねたあーちゃん。


あたしはただコクンと頷くことしか出来なかった。


きっとあのふたりは、誰が見ても“王子様とお姫様”。


悔しいけど、お似合いなんだ。


あたしなんかよりずっと。