「楓」


あたしが名前を呼べば、彼はどんな時でも耳を傾けてくれる。


「あたしね……」


今日こそは、素直になろう。


自分から気持ちを伝えよう。


そう、思ったんだ。


「どうした?」


あたしの顔を覗き込む楓に


精一杯背伸びして


――チュッ


あたしなりの気持ちを伝えた。


すると、楓は一瞬驚いた表情を見せて

とびっきりの笑顔をあたしにくれた。


「よくできました」


そう言ってあたしを優しく引き寄せる。


これ以上の幸せはない。


だって楓とこうしていられるだけで、とっても幸せだもん。


「しようか?」


「え……っ」


あたしが返事をする前に楓はあたしの唇を奪った。


それは、とっても濃厚なキスで。


イチゴかき氷の味がした。


――パンパンッ


「……な、なに?」


瞬間、大きな音がしてあたしはすぐに我に返った。


あ、あたし、こんなところで何してんのよぉおおおお!


バカ、大バカ!


「あ。花火だ」


ふと楓がそんなことを口にした。


楓の視線を追うと……



――バンバンッ


色とりどりの花火が夜空に輝いていて。


「うわぁ、キレイ……」


まるで、花火があたし達を祝福してくれてるみたい。


あたしは幸せで溢れていた。