どうしていいのかわからなくて、立ち尽くしていたあたし。


すると突然、ぐいっと手首を引っ張られた。


「……ひゃあ!」


な、なに……?


ふと、隣を見ると楓がいて。


「お前の席は、もちろんココだろ?」


そう言って挑発的な笑みを浮かべあたしの耳元で囁いた。


ひゃあああああ……


じ、寿命縮まるって……。


でも、嬉しくて。

とても嬉しくて。


楓はあたしを認めてくれてるんだなって実感したんだ。


そんなあたし達のやり取りを見て、あーちゃんはニヤニヤしながら


「あたし達、お邪魔みたいだから行くわねぇ~」


そう言うと瀬川クンの腕を引き、どこかに行ってしまった。


う、嘘……。


ふたりきりなんて。


あたしが口をポカンと開けて、あーちゃん達の背中を見つめていると、不意に肩を抱かれた。


「やっとふたりきりになれたな?」


やっとって。


それって素直に喜んでいいのかなぁ……。

これじゃ、ダブルデートの意味がないような気がするけど……

まあ、そこは置いておこう。


すると突然、楓は立ち上がり


「花火、見に行くか」


そう言って、あたしの腕を引きながらスタスタと歩き出した。