自分の才能の無さに呆れつつも楓の姿を見つめた。


学校のみんなは知らない楓の姿。


それは、あたしだけが知っている姿で。


あたし、こんな学校の王子様とあんなことしていいのかな……。


あたしはふと、旅行の夜を思い出していた。


“お前が欲しい”


そう言ってくれた楓……。


嬉しかったけど、素直に喜ぶことが出来なかった。


楓に似合う女の子は、スタイルが良くて美人な女の子だって分かってたから。


その気持ちは今も同じ。


王子様に似合うのはきっと、お姫様。


そう思うと胸が苦しくなった。



ブーブーブー


すると突然、テーブルの上にあった携帯が震えた。


ディスプレーには、

【着信 あーちゃん】


と、表示されている。


……あーちゃん?


どうしたんだろう……。


不思議に思いつつも、あたしは電話に出た。


「もしもし?」


『もしもし、穂香?』


電話越しのあーちゃんの声は何かいつもと違くて。


「あーちゃん、どうしたの?」


あたしが聞くと、あーちゃんは、いつもじゃ絶対に言わないような言葉を口にした。