「し、しばらくってどれくらい!?」


パニック状態をおこすあたしに対して、お母さんは脳天気な声で言った。


「う~ん。穂香の卒業式くらいまでには戻るかな?」


そ、卒業式って……

今、あたしは高2。


あと1年もあるじゃん!?


「そ、そんな…っ……」


“早く戻ってきてよ”そう言いたかったけど、言えなかった。



お母さん達が戻ってきてたら、楓との関係が終わっちゃうと思ったから。



「ああ~ら、いいじゃないの。
アナタには愛しの楓チャンがいるでしょう?」


愛しのって……。


そういう問題じゃないんですけど。


「な、何言って…」


「とにかく、お母さん忙しいから切るわよ。シーユー!」


お母さんはあたしの言葉を遮って一方的に電話を切った。


受話器から聞こえてくるのは虚しい機会音のみ。


し、シーユーって……