「お前が誕生日なのは知ってた。それで鈴さんが旅館に来いって言ってな」


……そうだったんだ。


「サプライズってことで。お前、自分の誕生日とか忘れてそうだし?」


まったくその通りでございます……。


「ねぇ、楓クン……どうしてこっちに?」


あたしが一番、聞きたかったこと。


今の楓クンならきっと、包み隠さず全てを話してくれる。

そんな気がした。


「本当は、お前がひとりになるっていうの聞いて、いてもたってもいられなくなった」


嘘……


「……10年間ずっと、お前を想ってきたから」


そんな……楓クンがあたしを?


未だに夢を見ているみたいで。


もし、これが夢なら永遠にさめないでほしい。

そう思った。


「全て、お前のためだ」

甘い言葉に胸が疼いた。


「楓クン……」

頬から涙が伝わった。



この涙はきっと、

悲しい涙じゃない。