「待て」


グイッと楓クンに手首を引っ張られた。


「……な、なに?」


あたしが聞くと、楓クンはあたしの耳元に顔を近づけて囁いた。


「お前、可愛すぎ」


「えっ……」


放心状態で、ぼーと立ち尽くすあたし。


頭が真っ白で、どうしていいのか分からなかった。


「……おい、大丈夫か?」


心配そうに顔を覗き込む楓クンに余計体温は急上昇。


「お、おおお、お風呂入ってきますっ!」


あたしは勢いよく部屋を飛び出した。






――チャプンッ


「ふわぁ~。癒されるぅ……」


真っ白のミルク風呂に浸かって「ふぅ」と一息ついた。


それにしても楓クン、どういうつもりなんだろう……。


“お前、可愛すぎ”


楓クンが言ったその言葉が頭の中で何度もリピートされる。


あぁああああっ!


もう考えたくないよぉ……。


あたしは頭までお風呂に浸かった。


楓クンの言葉、

鈴さんの言葉、

あーちゃんの言葉。


色んな思いがグチャグチャに混じったまま、あたしはお風呂を出た。