「いや!全然ですよ!」


むしろ、鈴さんの方がまた一段とキレイになったって……。


「これじゃあ、楓が手放せないのも分かるわぁ~」


「……す、鈴さん!」


今、言ったのはあたしじゃなくて楓クン。

楓クンは小さい頃から、お母さんのことを“鈴さん”って呼んでいた。


意味は分からないけど。


楓クンが手放せなくなるそれってどうゆう意味だろう……。


「気にすんなよ?」


楓クンはそう言ってるけど、かなり動揺しているようだ。


いつもクールフェイスを崩さない楓クンのこんなに動揺してる姿は初めてで。


なんだかちょっぴり嬉しくなった。


「んじゃ、お部屋にご案内しますねぇ」


鈴さんの後に続いてあたし達は部屋へ向かった。



――ガチャッ


部屋を開けた瞬間、畳の匂いがあたしの鼻をかすめた。


田舎のおばあちゃん家にいるような、何だか懐かしい気持ちになる。


「部屋もキレイ……」


畳の部屋にはちゃぶ台とお洒落な座椅子がちょこんと置いてある。


テレビはもちろん液晶で。