「……で、なんだよ?  いきなり呼び出して」


楓のブラウンの瞳があたしを見据えた。


ちゃんと……伝えなきゃ。


あたしが一番伝えたいことを。


意を決して、楓を見つめる。


楓と視線がぶつかって、胸がドクンッと激しく音をたてる。


「あ、あたし…楓が好きなの!  大好きなの……っ!」


あたしが伝えたかった言葉はたった一言だった。


小さい頃から、あたしの思いは変わらない。


指切りをしたあの頃のように、自分の思いを正直に伝えたかった。


そして、あたしの全てを……楓に捧げたかったんだ。


「あたし…楓じゃなきゃだめなの……っ」


――瞬間、甘い香りに包まれた。


楓に抱き締められたんだと気づくまで、数秒かかった。


待ち焦がれていた温もりに、涙がこぼれそうになる。


「穂香……」


耳のすぐ近くで楓の声が聞こえる。


囁くような甘い声はあたしを翻弄させた。


「俺、もう穂香を誰にも渡したくねぇ……」


「楓……」


「辛い思いさせて、ごめんな……」


掠れ声の楓に、あたしは頭をブンブンと横に振った。