「……昨日はごめんな」


漆黒の瞳があたしを捉えた。


その切なげな表情に胸がギュッと締めつけられる。


「俺、最低なことした。本当にごめん……」


揺れる瞳を見て、あたしはただ頷くことしか出来なかった。


「……行けよ。アイツんとこ」


「……えっ?」


爽はそう言うと、あたしの顔を覗き込んで、優しく微笑んだ。


「……楓に伝えろ。今度、穂香を悲しませたら許さねぇってな?」



「爽……」


「……じゃあな」


あたしの頭を優しく撫でると、爽は女の子達に紛れて、去って行った。


爽……。


爽は、あたしにとって初めての男友達だった。


あたしが困っている時は助けてくれて、泣いている時は優しく胸を貸してくれた。


爽…ごめんね……。


ありがとう。


校舎に向かって歩いて行く爽の後ろ姿を見つめながら、そんなことを思った。



あたしもこうしちゃいられない……。


楓に伝えなきゃいけないことがあるんだから……。


手をギュッと握り締めて深呼吸してから、意を決して鞄を開く。