「それ、王子からよ」


楓が、これを……?


「実はね、あたし今日、王子に呼び出されたの」


あーちゃんはあたしに優しく微笑むと、淡々と話始めた。


「王子に“穂香が女達に呼び出された。だけどついて行かないで欲しい”って言われたのよ」


「まあ、あたしは否定したんだけどね。王子がどうしてもって言うからなにか裏があるんだなって思った」


あーちゃんはいつもの素振りで、探偵みたいに目を光らせると、再び口を開いた。


「問い詰めたら、王子は渋々口を開いたわ“俺が守るのは簡単だ。だけど……”」


「だけど……?」


「“穂香なら大丈夫だ。俺は穂香を信じてる”そう言って、ポケットからそれを取り出したの」


あーちゃんはそう言うとあたしの手の中にあるそれを指差した。


「“これは、穂香は俺の女だって印。穂香なら俺が助けに行かなくなって絶対に大丈夫だ”って勝ち誇ったように言ってたわ」



“俺は穂香を信じてる”


その言葉を聞いた途端、あたしの中のなにかがプツンと切れて、涙が溢れた。