結局、家には帰れなくて、あーちゃんの家に押しかけた。


だけど、あーちゃんの家には先客がいて。


部屋に来るなり、涙を浮かべるあたしを見て、瀬川クンは悟ったのか、


「じゃ、俺帰るね」


あーちゃんの頭をポンと叩いて、彼は部屋から出て行った。


ふたりに悪いことしちゃったな……


あたしの事情で振り回してしまって、深く反省する。


小さなテーブルに、あーちゃんは紅茶の入ったマグカップを2つ置いた。


「……どうなった?」


あたしの顔を覗き込むあーちゃんの顔は、今まで以上に真剣だった。


あーちゃんは、あたしが楓ファンの女の子達に呼び出されてたことを知ってる。


だけど、あーちゃんは“一緒にはついていかない”って言ったんだ。


いつものあーちゃんならきっと“あたしもついて行く”って言ってくれるのに。


別について来てくれるのを期待していたわけじゃない。


だけど、あーちゃんがそんなこと言うなんて意外だった。


あたしは、あーちゃんに全てを話した。


女の子達に言われたこと。


爽に助けられたこと。


……楓に別れを告げられたこと。