「……お前のそういうとこ、好きだよ」
あたしの顔に影が出来た。
――チュッ
触れるだけのキスをした。
さっきとは違う……。
甘くて、優しくて、くすぐったいキス。
まるで“彼”のキスみたいで。
瞬間、雨の中で消えた楓の切なげな表情が頭に浮かんで……
また泣きそうになった。
――ポーン
軽やかな音が鳴ったと思ったら、エレベーターの扉がゆっくりと開いた。
爽はまたあたしの手を引いて歩き出す。
たどり着いたのは、一番奥にある扉。
爽は、その扉の横にある【HAYAKAWA】とかかれた機械にカードキーを入れる。
ガチャッと鍵が開く音がして、爽は扉に手をかけた。
「入れよ」
「お、お邪魔シマス……」
そーと玄関に入ると、あたしは部屋を360度見回した。
廊下には4つの部屋の扉あって、一番奥はリビングになっているようだ。
なんだか…豪華な家だなぁ……。