「……ここ、どこ?」


あれから爽に無理やり引っ張られて連れて来られた場所はいかにも高級そうなマンション。


新築っぽいし、30階くらいまでありそう……。


その大きいマンションを見上げながらあたしは目をパチパチさせた。


「……俺ん家」


ポケットに手を入れて、無愛想にそう答えると爽はあたしの手を掴んでマンションの中へと入って行く。


ちょ、ちょっと待って……


ヤバいよね…この状況。


どうしよぉおおおお!


爽は振り返るとあたふたしているあたしの手を更に強く掴んで、再び歩き出した。


「やだ…っ! あ、あたし帰る!」


掴まれた手を無理やり離そうとした。


「……いいから来いよ。風邪引くだろーが」


漆黒の瞳があたしを捉えた。


そ、そんなこと言われても……


男の子の家に入るなんて、変に緊張しちゃうよ。


変な想像をしていた自分が恥ずかしくなって、小さくコクンと頷いた。


爽に手を引かれて、ピカピカのエレベーターに乗り込むと、爽は30のボタンを押した。