爽を振り回してしまった。


傷つけてしまった。


本当に心から謝りたい。


「なんでだよ……」


爽は悔しそうに唇を噛み締めて小さな声で呟いた。


あまりにも切なそうな、表情に思わず目を瞑ってしまいたくなる。


「……アイツ、お前のこと傷つけたんだぞ?」


「それでも好きなのかよ?」そう聞かれて、あたしは迷うことなく頷いた。


「……爽のこと、好きだよ?  でも、それは友達として……んっ!」


「友達としての気持ちなの」そう言おうとしたあたしの唇を爽が無理やり塞いだ。


「……やっ…め…っ」


離れようとしても、強く後頭部を押しつけられて抵抗出来ない。


「……んんっ…!」


次第にキスは激しくなって爽の熱いものがあたしの唇を割って入ってきた。


……色んな気持ちが渦を巻いて。


ただただ苦しかった。


「んっ…ふっ…」


唇が離されたと思ったら、爽があたしを力強く引き寄せて耳元で呟いた。


「もう楓のところには行かせねぇ……」


甘美な言葉なはずなのに、あたしの胸は少しも音をたてない。


それは、あたしにとって、とってもた苦しい言葉だった。


頷くことも首を振ることもせずに、あたしは爽に抱き締められていた。