すると楓の手は、あたしの手首を解放した。


ふと楓を見ると、気持ちよさそうに机に突っ伏して寝ている。


あ、寝てたんだ……


楓に握られた手首が熱い。


今にも赤くなって、湯気が出てきそうなくらい。


あたしは自分の手首をそっと触った。


「…ほの、か……」


呼ばれた名前に、驚いて横を見る。


寝ぼけた楓の姿があたしの瞳に映った。


か、可愛い……


こうやってよく見ると、睫毛が長くてお人形みたい。


女装して街を歩いても、きっと誰も気づかないだろう。



「すき……」


……えっ?


楓から発された言葉に、更に驚いた。


す、き?


好き、好きぃいいい!?


ボッと顔が赤くなるのがわかる。


か、かかか、楓…今、なんて……



パニックを起こしているあたしの鼻を“誰か”が軽くつまんだ。


「ほぇ……っ」


か、かかかか、楓っ!


そこには、悪戯に笑みを浮かべる楓の姿があった。


「びっくりした?」


きゃああああああ……


楓のブラウン瞳にはマヌケ顔のあたしが映っていた。