「いつか、決めなきゃいけない時が来るの」


あーちゃんの言葉にあたしは生唾を飲み込む。


「穂香が決めることだから、あたしは口出ししないわ」


それと同時にあーちゃんの顔が緩んだ。


「だけど」とあーちゃんは続ける。


「二頭追うものは一頭も得ず、よ?」


“二頭追うものは一頭も得ず”


その言葉は、今のあたしのにはぴったりで。


「ふたり求めていたら、結局どっちもいなくなっちゃうってこと」


あたしが、楓か爽か決断出来なかったら、ふたりともあたしから去って行っちゃうってこと……?


そんなの絶対嫌だ……。


「穂香を幸せにしてくれるのはどっち?」


あーちゃんは柔らかい表情であたしにニコッと微笑んだ。


「全ては穂香次第よ」


全ては…あたし次第。


その言葉はあたしの心に深く響いた。


「あーちゃん…ありがとう」


そう言った途端、涙腺が緩んで、あたしは目尻を拭う。


あーちゃんはなにも言わずに優しく微笑んで頷いた。