「そんなことがあったんだ……」


顔を合わせるのが気まづくなってしまって、思わず下を向いた。


楓と爽にそんな過去があったなんて……


それに柚月サン。


柚月サンがどれだけ楓のことを愛してたのかわかった。


それと同時に罪悪感が生まれる。


きっとあたしじゃ、柚月サンに勝てない。


見た目はもちろん、楓を思う気持ちだって負けちゃうかもしれない。


柚月サンは、あたしの知らない楓をたくさん知ってるから……。


そんなことを考えていたら、爽があたしの額をデコピンした。


「ちょっと! 痛いよぉ」


手のひらでヒリヒリする額をおさえるあたしを見て、爽はクスッと笑った。


「やっと笑った」


「えっ?」


いきなりなにを言い出すのかと思ったら、爽は首を傾げて優しく微笑んだ。


うっ。


……やっぱり。


爽は楓によく似てると、ずっと思ってた。


ずっと一緒にいたからなのかな。