――遠足の夜。


俺は楓の部屋を訪ねた。


俺が入ってきたら、瀬川湊斗はその状況を読んだのか、部屋を出て行った。


「穂香は渡さねぇよ?」


俺がなにも言わなくても、楓は見透かしたかのようにコーヒーを飲んで涼しい顔をした。


「宣戦布告だ」


「上等だな?」


いつからか、俺は穂香に惹かれていた。


柚月のことはもちろん、忘れていない。


だけど、こんな気持ちは柚月以来だった。


だから俺は、本気で穂香を愛したかった。


もう楓には負けたくなかった。


負け犬には…なにたくなかった。


最初はそんなつもりなかったのに。


ただ、ふたりの中を壊してやろうと思っただけなのに。


俺は穂香を好きになってしまった。


だから宣戦布告したんだ。


絶対、楓から穂香を奪ってみせると。