「お前に聞いてほしい」


……ドクンッ。


暴れだす心臓が妙に息苦しくて。


「楓の…こと?」


平常心を装ったつもりでも、声が震えてしまう。


何も言わずに、ただ頷く爽。


その複雑な表情から、あたしが知っちゃいけないことだということを物語っていた。


だけど…知りたい。


どんな過去を持っていても、楓は楓だから。


どんな楓も受け止めたいと思ったから。


でも実際、聞くとなるとこの場から逃げ出したいと思う自分がいる。


そんなあたしは…弱虫だ。


「お前はアイツが好きなんだろ?」


爽は確かめるように、あたしの顔を覗き込む。


「好き……」


すると爽は深いため息をついて、すぐ側にあった壊れかけた机に寄りかかった。


「聞いたら、ショック受けるかもしんねぇ……」


瞼を伏せて、すぐにあたしに視線を戻す。


「それでも…聞くか?」


あたしは小さく頷いた。


あたしの返事を確認すると、爽は淡々と話し始めた。


「俺らが中3の頃……」