「……せ、瀬川、クン」
走っていたせいか、息が上がって上手く言葉を発することが出来ない。
「楓なら中にいるよ?」
瀬川クンは親指で部屋の扉を指すと、あたしに向かって微笑んだ。
「大丈夫だよ。しばらく戻らないから」
「へっ?」
……しばらく戻らない?
どういうこと?
「……亜沙子、部屋にいるかな?」
照れたように頭を掻く瀬川クン。
その頬は、ほんのり赤かった。
あー、なるほど。
そういうことか。
あーちゃんといるから、しばらくは部屋に戻らないってことね。
「うん。多分、もう部屋にいると思う」
「そっか。ありがとう」
安心したようにそう言うと、瀬川クンは軽い足どりで歩き出した。
プレーボーイで有名だった瀬川クンが、あんなに一途になるなんて……
恋すると人って変わるもんだな……。
あーちゃんと瀬川クン。
ふたりはとってもお似合いだと思う。
瀬川クンの背中を見つめながら、そんなことを思った。
……よし。
あたしも頑張らなくちゃ。

