ここは2階。


つまり、A組の男子の階なわけで。


そんなところに女子がいるなんて、不自然なこと…。


「お前、ここで何してんだ?」


鋭く突き刺さる先生の視線に思わず下を向く。


ど、どうしよう……


なんて言えばいいのぉ……。


頭が真っ白になって、冷や汗がダラッと背中に伝わる。


「川島さんが落とし物を届けてくれたんです」


えっ……?


ふと楓を見ると、楓は顔色一つ変わってない。


お、落とし物…


どうしてそんな嘘、さらりと言えるのよぉ。


「落とし物か。じゃ、もう川島は戻れよ」


先生は納得したかのように言うと、あたしの肩をポンと叩き通り過ぎて行った。


よ、よかったぁ…。


「……穂香」


安心して、安堵の息を吐くあたしを、楓が呼んだ。


その声と同時にあたしは楓を見上げる。


すると、楓はあたしの耳元に顔を寄せて


「夜、俺の部屋においで?」


甘くそう囁いた。


その甘い声にあたしの体が痺れそうになる。


――ガチャッ


その甘い囁きに呆然として、気がついた時には部屋の扉は閉まっていた。