「…う…っ…」


“こんなとこで泣いちゃ、ダメだよ…”

あたしの中の天使が叫ぶ。


“泣いちまえ。”

“もう恋なんてどうでもいいだろ?”


それに対抗して悪魔が囁く。


いろんな感情が入り混じって。


どうしたらいいのかわからなかった。


――ガチャッ


「……お前、何やってんの?」


あたしの頭の上で、驚いたような声が聞こえた。


「…え……」


声のしたほうに視線を、ずらすと…


「か、えで……」


ずっと恋焦がれていた人があたしの前に立っていた。


「……どうしたんだよ?」


ポケットに手を入れたまま、あたしの顔を覗き込む。


ふわっと漂う甘い香りに体がふやけそうになる。


「楓…あ、あのねっ……」


「おーい!」


あたしの言葉を遮る太い声が聞こえた。


……だ、誰!?


あたし達の視線はその太い声の主に注がれる。


近づいてくる姿にあたしはギョッとした。


「せ、先生……」


ヤ、ヤバいよ…。