爽の吐息が耳にかかって右耳が集中的に熱くなる。


「な、なな…何やってんのよっ!」


あたしは思いっきり爽を突き放した。


すると、爽は口端を上げてニヤリと笑った。


「抱き締めたんだけど?」


いや…そういうことを言いたいんじゃなくて……


「あのねぇ……」


「……こんな学校のど真ん中で何してんだよ?」


あたしの言葉を“誰か”が遮った。


えっ……?


「抱き合うなんて、お前ら朝から熱いな?」


ふわりと漂う甘い香りと挑発的な口調ですぐに誰だかわかった。


でも、なぜか後ろを振り向くことが出来なくて……


「だから、何か用?」


爽は冷たくそう告げて、あたしの後ろをずっと見つめていた。


爽のそんな姿は初めて見て。


――不意に彼に似ていると思った。


「……なんだ。お前の女か」


えっ……


な、何言ってるの……?


あたしはしばらく動くことが出来なかった。