楓はきっと、あたしなんかより愛チャンの方がいいのかも知れない。


楓はそれを教えるために……。


そう思うと胸がギュッと締めつけられた。


「アンタみたいな凡人は楓クンとは不釣り合いなのよっ!」

――バシッ

頬に痛みが走った。


それが打たれたと気づくまで、そう時間は掛からなかった。



「これでわかったでしょ? アンタと楓クンは不釣り合いだってことっ!」


愛チャンがあたしの髪を勢いよく引っ張る。


「や、めて……」


「いい!? 楓クンみたいな王子様に似合うのはね……っ!」


引っ張る力がグッと強くなる。


「アンタみたいな不細工な凡人じゃなくて、あたしみたいなお姫様なのよっ!」


……わかってる。


そんなのあたしが一番よくわかってるよ……。


「は、なして……」


そう言うのが精一杯だった。


体より、心の方がずっと痛かった。



大切な人を失いかけてるのに、戦うことも出来ないあたしは

ただの、脱け殻。