「もしもし……」


「穂香?」


トーンの低い声が電話を通して聞こえる。


その声の持ち主は……


「爽?」


爽が照れ臭そうにクスッと笑ったのが電話越しからでも伝わる。


「俺の声だってわかったんだ?」


「ま、まぁ……」


ていうか、なんであたしの番号知ってるんだろう……。


「ねぇ、どうしてあたしの番号知ってるの?」


思い切って聞いたあたしに返ってきたのは……


「ん? それは……」


「それは?」


「……秘密」


あたしの切なくさせる言葉だった。


爽は楓とどことなく似てる気がする。


言葉や仕草に、重なるところがある。

それと、目を細めて笑う笑顔も……。



……だから爽といると、楓のことを思い出して余計に悲しくなるんだ。


「何かあったの?」


あたしが尋ねると爽は、「んー…」と言葉を濁して、何か言うのを躊躇っている様子だった。